「とびきりいい靴をはくの、いい靴をはいてるとその靴がいい所へ連れて行ってくれる」と、静さんが言っておりました。
子どものころに読んだ”花より団子”のコミックに出てきた、深く印象に残ったセリフです。
モットーにしているほどではありませが、今でも何となくそのセリフを気にすることがあって、靴選びはじっくりと時間をかけて厳選するようにしています。
車やバイクにとってはタイヤが靴ですね。
唯一地面と接触している部品であり、最も過酷な状況にさらされる部品でありながら「何でもいいのでなるべく安いのでいいよ。」とか、「年数が経っているけどまだまだそのまま使って。」とか、わりかし軽視されがちな気がするのは、靴と同じなのかもしれません。
では『いいタイヤ』とは何なのか考えてみます。
ネットで異常な安さで売られている格安タイヤはさておき、一般的に有名な老舗メーカーのタイヤであれば基本的な性能や耐久性は問題なく『いいタイヤ』だと言えるでしょう。
整備士的観点からすると、それに加えて『いい状態のタイヤ』であることが重要だと思われます。
写真は少し前に入庫したバイクのタイヤです。
曲がるときにハンドルが取られて変な挙動をするから、フロントフォークが曲がってるんじゃないか?とのご相談でしたが、原因はタイヤの偏摩耗でした。(写真左側にあるように三角に減っています。正常なものは右側、綺麗な丸。)
購入時からこうなっていたらしいので、原因が乗り方の問題か空気圧の不足なのかはわかりませんが、これではタイヤとして十分な機能を果たせませんし、コーナーを曲がる際に挙動が乱れることで転倒の原因にもなります。
歩き方が悪いと靴が片減りして怪我しやすくなる。というのと奇しくも同じようなことが起こるわけですね。
タイヤを見るだけでどのような乗り方をしているのかわかる。というくらいですので、空気圧点検と合わせて気にしていただきたい部分ではあります。
これは溝の減り方こそ問題ないものの、泥土の汚れや風雨により表面が傷んだ車のタイヤです。
なかなかここまで痛むことは少ないものの、この状態だとどこかのヒビがきっかけでパンクしたり、高速走行中に内圧が上がって破裂することもあり得ます。
タイヤがゴムである限り劣化は避けられないのですが、せめて定期的なクリーニングを行うことで劣化を最小限にとどめることは出来るかもしれません。
タイヤ劣化に関する車検基準については溝の深さ以外は、数値としてはっきりとした基準がないので「車検に通りませんか?」と聞かれると答え辛いのが本音です。
命とタイヤの価格を秤にかけてタイヤの方が重くなることはまず無いので、まずは心にその秤を持っていただけると納得しやすいのかもしれません。
軽視されがちなタイヤですが、自動車部品の中では整備士でなくてもわりかし点検しやすい部分であることも事実です。
月に一回で構わないので、時折タイヤを見てあげてください。
くたびれていたり、溝が無いなと感じたら交換を検討してください。
きっと、いいタイヤを履くことで車はあなたを素敵な場所まで連れて行ってくれることでしょう。